プラチナと燃料電池  

                         
 

 

●posted 021201 増加を続ける中国のプラチナ需要: (021128 日経産業記事を参照)

世界のプラチナ需要は、上昇圧力を強めている。自動車排ガス浄化触媒や燃料電池用ニーズも増加基調だが、中国での需要増も無視できない。触媒大手ジョンソンマッセイが2002年の用途別、地域別の需要内訳について、予測値をまとめた。それによると、中国の2002年のプラチナ需要量は、45トン強となる。2002年の世界需要の23%を占めることになりそうだ。ただし、欧米や日本では産業用途が重要だが、中国ではなお宝飾品向けの比重が高いようである。
 

しかし、中国でも燃料電池用テスターの海外からの導入が始まっており、中国国内でのFC開発にも今後拍車がかかっていくであろう。そうなると、中国でのプラチナ需要も、産業用途向けのものが高まっていく可能性がある。

 

●posted 021108 パラジウム離れ、止まらず: (020613 日経記事、020713 日経記事、020821 日経記事他を参照)

パラジウムは、世界生産(約250トン)の約7割をロシアに依存している。ロシアのカントリーリスクはなお高く、供給企業の長期的スタンスが必ずしも明確ではないため、東京工業品取引所では、2000年2月に先物相場が急騰、価格凍結にまで追い込まれたことがあった。凍結解除後も乱高下を続け、2001年年初にはNYMEXで1,000ドルを超えたが、供給不安から反落、その後相場は低迷を続け取引が細っている。需要家はパラジウムから白金に漸次シフトしているようだ。2001年以降、内外の相場は一貫して下落傾向である。
 
NY先物では、021107現在、1トロイオンス300ドル強となっている。6/12のNY先物は340ドル台だった。その時点でJMは「250〜400ドル」のボックス圏内で年内は推移すると見ていた。8月に400ドルに迫る局面もあったが、概ね緩やかな下降基調であり、JMのポジション感覚は今のところ予測通りだ。
 
http://fuhito.bizland.com/pallad.html
 
パラジウムは、白金系貴金属のひとつ。白金鉱山で平行して採掘されている。白金と多くの点で似た性質を有しているが、顕著な差違もある。ニッケル鉱山で副産物として産出されるパラジウムもある。JMの99年データでは、世界供給の67%がロシア、南アフリカが23%、北米が8%で、また需要セグメント別に分けると、自動車触媒が63%、電子機器が21%、歯科治療用合金が12%、宝飾用が4%という内訳だった。しかし、2001年データでは、自動車触媒向けは13ポイント下がり50%になったとされている。供給量の変動に敏感な自動車業界が、パラジウムから白金へのシフトを象徴しているようだ。今後数年はこのシフトが続くのではないか、と業界筋では観測している。
 
http://209.67.30.245/jsp/markets/pal_pre_agree.jsp
 
ロシア最大の非鉄金属生産会社であるノリリスクニッケルは、300〜600ドル/トロイオンスの価格帯を目先想定していることを明らかにしていたが、現状では、その下限を割る状況となってきている。価格維持のために供給量に制限をかけるようであれば、2年前の混乱相場を再現しかねないが、同社のマクシム・フィンスキー副社長は、5〜10年の長期のスタンスで安定供給をはかっていく考えを示している。ノリリスクの大口需要家との個々のあいたい取引での値決めに注目していかなければならない。
 

ノリリスクでは、今後販売先としてアジアを重要視する考えで、あらゆる金属について販売の25%はアジア向けとしたい意向を表明している。

 

●posted 021108 GM定置型FC参入で、白金相場強含み: (021029 日経記事他を参照)

10/24に発表されたGMによる定置型FC市場への参入。
 
http://mirai.atclub.co.jp/fcjournal/tak%40fcjournal021106-02.htm
 
もともと2002年の白金相場は、年初以来底堅いベクトルだったが、世界的な景気減速の中、ガソリン車向けの排ガス浄化触媒や電子機器向けの白金需要に関しては下方圧力も指摘されていた。しかし、GMの発表を好材料として、10/25、NYマーカンタイル取引所の先物は600ドル(1トロイオンス)のラインを抜けて上がった。1年半ぶりの高値水準だ。
 
http://www.nymex.com/jsp/markets/pla_pre_agree.jsp
 

輸出大手のロシアが今後どう出てくるか目が離せない、という。

 

●posted 021001 Engelhard-Clal 社と Engelhard Metals 社の研究: (両社のホームページ他を参照)

エンゲルハードは、貴金属触媒の雄である。エンゲルハード自身は、当初、物理的加工のビジネスも行なっていたが、現在は化学的加工のビジネスに注力している。より正確には、物理的加工のビジネスに関しては、フランスの会社と合弁で作った Engelhard-Clal(クラル) 社(http://www.engelhard-clal.fr/)に、現在は、100%集中させている形である。地金売買は、もちろんグループで現在でも行なっており、日本では、エンゲルハードメタルズジャパンという子会社を持っている。

Engelhard-Clal の事業には、3つの柱がある。即ち、産業用シルバー、産業用プラチナ、精錬と化学的加工だ。

ロンドンに、LPPM Management Committee という組織があるが、LPPMは London Platinum & Palladium Market の略である。現在この委員会には6つの企業から副会長が送り込まれている。Johnson Matthey PLC、J. Aron & Company (U.K.) 、Mitsui & Co. Precious Metals Inc. (London Branch)、Dresdner Kleinwort Wasserstein、Standard Bank London Limited、HSBC USA London Branch が派遣元である。そして、現在の会長社は、Engelhard Metals Limited(63 St Mary's Axe London EC3A 8NH tel:+44 (0)20 7456 7336 fax:+44 (0)20 7929 3994)であり、Richard Lowish 氏が会長を務めている。プラチナとパラジウムの値決め(fixing)は、この LPPM Management Committee が行なっている。

白金が貴金属と認識されたのは1751年のことであり、パラジウムにいたってはその存在が認知されてから200年すら経過していない。金銀の長大な歴史とは比較するべくもないのだが、プラチナとパラジウムが近代科学の進歩に与えた影響ははかりしれない。ロンドンは長い間、こういった貴金属取引の中心地だったが、1973年に London Platinum Quotation が導入された。 主要な取引企業から報告されるプラチナのスポット価格が、1日に2回示されることになっている。これが、いわゆる指標価格であり、値決めの基準となっている。1973年に、その原型ができたということである。1979年には、ロンドンとチューリッヒの代表的なディーラーが、良質品の基準について合意を得た。1987年には、それまで非公式な形で行なわれていた相対取引についても、 必ずLPPMに報告が行なわれるよう取り決めが行なわれた。こうした背景の上で、1989年、London Platinum and Palladium Quotations が拡充され、現在の厳正な値決め(fixing)システムが確立することとなった。
 
現在、LPPM Management Committee のメンバーは、次のようになっている。
 

フルメンバー
アソシエートメンバー

J. ARON & COMPANY (U.K.)

AIG INTERNATIONAL LIMITED

CREDIT SUISSE FIRST BOSTON

AMALGAMATED METAL TRADING LIMITED

ENGELHARD METALS LIMITED

BARCLAYS BANK PLC

HSBC USA LONDON BRANCH

COOKSON PRECIOUS METALS LTD.

JOHNSON MATTHEY PLC

DAWNAY, DAY & CO., LIMITED

JPMORGAN CHASE BANK

DEUTSCHE MORGAN GRENFELL

MITSUI & CO. PRECIOUS METALS INC. (LONDON BRANCH)

DRESDNER BANK AG

N.M. ROTHSCHILD & SONS LIMITED

ENGELHARD-CLAL UK LIMITED

STANDARD BANK LONDON LIMITED

ENGELHARD INTERNATIONAL LIMITED

UBS AG

GERALD LIMITED

INCO EUROPE LIMITED

INVESTEC BANK (UK) LIMITED

MITSUBISHI CORPORATION (UK) PLC

MORGAN STANLEY & CO. INTERNATIONAL LTD.

MOSCOW NARODNY BANK LIMITED

NATEXIS METALS LIMITED

NORIMET LIMITED

PRUDENTIAL-BACHE INTERNATIONAL LIMITED

RICHMOND COMMODITIES LIMITED

SCOTIAMOCATTA

SEMPRA METALS LTD.

SUMITOMO CORPORATION EUROPE PLC

WESTLB LONDON BRANCH

 

●posted 021001 Engelhard 社の研究: (同社のホームページを参照)

同社は、ジョンソンマッセイと並ぶ貴金属触媒メーカーであり、排ガス対策技術や天然ガスの純化のための技術においても卓越している。Engelhard 社自身の言葉を用いるならば、「表面処理とマテリアルサイエンスの企業であり、顧客の製品やプロセスの改良に資する技術を提供している。Fortune 500 企業のひとつとして、種々の、環境向上、プロセス改良、表面処理、性能改良のためのアプリケーション技術における世界的なリーダーとなっている」 本社はニュージャージー州 ISELIN にある。

 
以下は、同社のウェッブサイトのリリースゾーンからピックアップし、要約した。
 

YYMMDD
タイトル
内容

020807

経済的に天然ガスを純化する Engelhard の技術をカリフォルニアの石油/ガスメーカーが採用

カリフォルニアで石油とガスの製造を行なう Tidelands Oil Production Company は、そのロングビーチ工場で、 Engelhard の「Molecular Gate」システムを用いて、副生(天然)ガスから二酸化炭素と水蒸気を除去(除去率は28%以上)している。この処理を行なうことで、生成ガスがパイプライン移送できるようにしている。Tidelands 社は、こうして製造した天然ガスを地域の移送システムを通じてコミュニティーに売り、そのエネルギーニーズに応えている。これは、Engelhard の同技術の最初の実用例となっている。二酸化炭素を除去するためによく使われている技術として「Amine 法」があるが、その方法では水分を除去することはできない。その点、「Molecular Gate」システムなら一石二鳥だし、コストも安く、操作が簡単で、環境にも優しい。「Molecular Gate」技術は、 Engelhard の表面処理技術やマテリアルサイエンスにおける蓄積ゆえに生まれたもので、ユニークな組成物質の分離を可能にする。「Molecular Gate」技術の利用によって、Tidelands は、1日100万立方フィート(1MM SCF/D)のパイプライン品質の天然ガスを製造することができる。「Molecular Gate」の反応プロセスは、除去材を敷き詰めた固定ベッドに二酸化炭素と水の分子を取り込むことによるもので、注入圧のもとではメタンは自由に通過するこができる。 Engelhard では、ユニークな除去材は、PSA(pressure swing adsorption)システムに組み込む形で提供しており、それぞれのシステムは個々の顧客ニーズに応じて設計することにしている。Tidelands は、ロサンゼルス盆地で400以上ものアクティブな石油井を管理しており、またロングビーチでオンショアの石油/ガス精製工場を経営している。

020725

Engelhard 社の排ガス制御製品がE-コマースサイトで買えるようになった 

公害対策技術をオンラインで迅速に売買し、デリバリー指定するためのB2Bサービスを、Engelhard が始めた。http://www.engelhard.com/ptx が、そのサイトだが、そこで売買できるのは、ディーゼルやLPGの排ガス制御のための標準品の他、カスタム仕様の製品も対象となっている。対象となる買い手は、素材加工メーカー、建設、鉱業、発電市場などである。このサイトは、Engelhard 社のホームページにもリンクされている。売買サイトには、製品カタログ、ディストリビューターリスト、購入決定機能、オンラインオーダー追跡機能、取引記録、FAQ、用語集などが備わっており、これによって、購買プロセスのスピードアップにつながり、また流通業者における煩雑な事務処理業務の軽減をもたらすことができる。担当しているのは、環境技術部門の調整/アフターマーケット課である。同社では、サイトの効率と使い勝手のよさによって、2002年のPTX(TM) やTWX(TM) の触媒製品のおよそ75%はサイト経由になるものと予測している。2003年のサイト経由率の目標は、90%だ。

売買サイトでは Engelhard の最新技術を駆使した製品を購入できるが、具体的には、次のような製品が対象になっている。

●ガソリン、LPG、高圧天然ガスにより閉鎖環境の中で作動させる、ディーゼルやスパーク点火エンジンから排出される一酸化炭素とハイドロカーボン(HC)を制御するための「two-way」触媒であるPTX(TM) 。
●天然ガスを燃焼させて作動するエンジンから排出されるNOx、HC、COを制御するための「three-way」触媒であるTWX(TM) 。
●ディーゼルエンジン用に微粒子を除去するための触媒フィルターであるDPX(TM) と STX(TM) 。
●発電機器のための選択的触媒削減(SCR)システム。例えば、NOx制御のためにバナジウムとチタニウムでコーティングしたVNX(TM) 触媒や、同様にNOx制御のためのゼオライトでコーティングしたZNX(TM) 触媒。

サイトにはサーチエンジンも備わっており、約1,000アイテムの商品の中から快適に目指すものを探せるようになっている。

020723

2002/2nd QTR 業績報告

2002年6月30日に終わった第2四半期の業績が発表された。純利益は、6,000万ドル強で、年初の業績予測通りの数値となった。これに対して売上は約10億ドルで、対前年同期では減少となったが、これは白金系貴金属の相場が相対的に軟化したためである。しかし、新技術の開発を含む経営努力によって利益へのマイナスの影響は最小化できた。このQTRに計上された有価証券投資損失には、プラグパワー社の株価低迷によるものも含まれている。次に示すのは、期中の部門ごとの営業利益である。

事業ドメイン
営業利益額(万ドル)

環境技術

3,100

プロセス技術

2,300

表面処理/コスメティクス/性能改良技術

2,500

マテリアルサービス

1,600

Engelhard は、第1〜第2四半期を通じて8,500万ドルのフリーキャッシュフローをもたらしたが、これは、負債の圧縮と株式の買い戻しのために用いられた。オランダの DeMeern にGTL用の触媒工場を開設したこと、ドイツの Nienburg にガソリンやディーゼルの排気ガス関連の技術を担う事業所を開設したことなども、第2四半期のハイライトであった。

020718

BMWに採用されたスモッグ浄化技術

2002年の夏の終わりまでに、 Engelhard の技術を搭載したBMWのニューモデルが、ショールームを飾ることになるだろう。これは準ゼロエミッション車(PZEVs)の、2003 BMW 325i セダンだ。採用された技術は、 Engelhard のオゾン破壊触媒「PremAir」である。2003年に規制が強化されるカリフォルニア、ニューヨーク、バーモント、メインおよびマサチューセッツの5州で発売されるモデルカーとなる。

020627

サソール社のコミットメント

サソール社のGTL技術の商用化に賭ける企業意思が、新たなマイルストーンに到達した。オランダ、ユトレヒト西郊 De Meern に、触媒の新工場を開所したのである。同地にある Engelhard の敷地内に2,000万ユーロを投じて建設されたこの事業所では、サソールが開発した最新のコバルト触媒が製造されることになっている。この触媒は、(GTL燃料を生成するための)低温フィッシャートロプシュ法を用いたスラリーベッドリアクターで用いられることになる。この製造技術は、1992年から、サソールが南アフリカのサソールブルグ研究所で研究開発を始めたものであったが、今回の新触媒工場のオープンによって、サソールと南アフリカと Engelhard による結束した強い意思があらためて確認された。

010726

排ガス浄化触媒のシミュレーションがオンラインで可能に

このオンラインシステムは、触媒業界では初めて試行されるものとなる。これを用いれば、特定エンジンの排ガス処理システムに触媒を応用した場合のシミュレーションが、オンラインで可能となった。自動車メーカーのエンジニアにとって、時間節約にもなり、勘だけに頼っていたのでは不可能な正確なシミュレーションを行なうことができる。フォードでは、このオンラインシミュレーターの具体的な活用が始まっている。

 

●posted 020609 ルステンブルグ白金鉱山とジョンソン・マッセイ: 

商品先物取引市場に、フジフューチャーズ(株)という会社がある。同社の白金サイト(http://www.fuji-ft.co.jp/selection/pura/index.htm)から学べることを、まとめてみたい。まず、白金の世界での年間供給量は、150トン強に過ぎない。「近年の年間供給量は約160〜180トンと、『金』の約1/20程度となっています。『白金』は原鉱石1トン中にわずか3グラム程度しか含まれておらず、また有史以来の生産量は約4,000トンと、大変希少価値の高い金属です(『金』の約1/25)」

世界の究極可採埋蔵量は、約10万トン。 

次に、産出国別比率は、南アフリカ約7割、ロシア約2割、残りは北米その他、ということになっている。また、需要内訳(http://www.fuji-ft.co.jp/selection/pura/pura-kihon2.htm)を見ると、工業用と宝飾用が、ほぼ拮抗していることがわかる。面白いのは、世界全体の宝飾用需要の約80%を日本市場が占めているという事実である。

白金(原子番号78)には、5つの近縁元素が存在している。以下、括弧内は原子番号である。パラジウム(46)、ロジウム(45)、オスミウム(76)、ルテニウム(44)、 イリジウム(77)。総称して、「白金系貴金属物質」(http://www.fuji-ft.co.jp/selection/pura/pura-date1.htm)と呼ばれている。燃料電池の電極触媒として不可欠な白金は、水素エネルギー社会実現の鍵を握るとも言うべき存在だが、類縁元素にも水素との親和性に特徴を有するものがある。パラジウムは、水素吸蔵力が極めて高い元素である。また、ルテニウムは、水を太陽光分解して水素を発生させるための光触媒として用いることができる物質だ。

ところで、ジョンソン・マッセイ社の日本法人のホームページを見ると、「現在、ジョンソン・マッセイは世界最大の白金鉱山、南アフリカ『ルステンブルグ白金鉱山』の協同精製業者として 世界の白金需要の約30%を供給しています」(http://www.jmj.co.jp/oitati.html)とあり、白金現物の生産にも深く関っていることがわかる。

 

●posted 020607 フランシス・ベーコンとジョンソン・マッセイ: 

2002年に入って、三菱商事が、燃料電池関連ファンドを組成した。「三菱商事がロイヤル・ダッチ・シェルの燃料電池開発子会社(シェル・ハイドロジェン)や、触媒世界最大手の英ジョンソン・マッセイと共同で3月に燃料電池分野に特化した、つまり燃料電池やその原料となる水素に関連する技術をもつ企業、商業化直前の技術を持つ企業や株式公開間近の企業を中心に投資ファンドを創設します。株式では大手自動車メーカー、電機メーカー、電池、天然ガス、ガラス関連からも注目銘柄は多岐にわたります。商品市場では何といっても電極に使われる白金です(http://www.wakaba-pha.co.jp/saikin_1401.htm)」

燃料電池の電極触媒として不可欠な白金(プラチナ!)。その白金を産出する鉱山は世界でも稀少である。南アフリカが7割、ロシアが2割と言われている。最近になって金の価格が高騰したが、白金はそれ以上に高値圏で下方硬直している。なぜなのだろうか? 稀少資源であるからというだけでは説明にならない。買い圧力が強いから値が張るのだ。現在、世界で同時進行している燃料電池への熱い開発ドライブが、その背景の一端をなしていることは間違いない事実だろう。

ところで、世界で初めて燃料電池の実用化がなされたのは、1959年のことであった。開発したのは、ケンブリッジ大学にいたフランシス・ベーコン他であった。彼らが開発した燃料電池はアルカリ型燃料電池と呼ばれるものである。1969年7月10日、人類史上初めて月面に人間を降り立たせたアポロ11号に、このアルカリ型燃料電池が搭載されていたことから、俄然、燃料電池というものに世界的なスポットライトが当てられるようになった。そのベーコン氏と白金をつないでいた「赤い糸」のことが、広瀬隆氏の本「燃料電池が世界を変える―エネルギー革命最前線 」の記述の中で確認できる。少し長くなるが引用してみよう。

「ベーコンは、八〇歳の高齢を迎えた八四年に、貴金属商ジョンソン・マッセイに燃料電池コンサルタントとして迎えられた(のである)。バラード社がカナダ国防省の委嘱を受けて燃料電池の開発をスタートしたのが、ちょうど同じ時期だったが、それは潜水艦用の燃料電池であった。ベーコンもまた、第二次世界大戦中にドイツと戦うため対潜水艦用兵器の開発に携わっていた。ベーコンの頭脳を迎えて、ジョンソン・マッセイは早くも八〇年代半ばに燃料電池用の白金触媒で全世界を支配する道を見つけていたのである。同社の資本は、全世界の金価格を毎朝決定するロンドン・ロスチャイルド銀行会長のイヴリン・ロスチャイルドと、地球上の白金の大半を生産する南アフリカ(南ア)の金鉱会社アングロ・アメリカン会長のオッペンハイマー一族が握ってきた。つまり北海油田を採掘するシェルと同じ資本であり、バラードがカリフォルニア州のパートナーとして最初に選んだ石油メジャーがシェルであった」(p54)

ロスチャイルドは、白金の値を決め、白金の燃料電池への戦略的応用を指向し、そして水素エネルギー社会の到来を強力に推進しようとしている。