Newsmakers Collection
 
 Brick Price
 
                                 
 ブリック・プライス(特撮映像プロデューサー)
        〜子どものように感動する心が新しい可能性を開いてくれる〜
 
                           by   竹本 隆
 
                                  月刊「ポポロ」 1992年11月号 初出
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(プロフィール)
 
1945年テキサス州生まれ。アメリカ第7代大統領アンドリュー・ジャクソンの血も流れているという。
     
               
 マイケル・ジャクソンが欲しがった3次元カメラ
 
 「自分の能力を信じ、想像力を限りなくはばたかせれば、実現できないことはない。夢見ることができるものは、いつか必ず達成されます」
 
 ブリックが経営するワンダーワークスという会社は、2つの事業の柱を有している。そのひとつは、特撮フィルムや3次元フィルムなどの映像関連プロジェクト。そして、もうひとつ、宇宙に関するさまざまな展示モデルやシミュレーションモデルの制作プロジェクトが、得意分野だ。
 ディズニーランドで『キャプテンE.O.』の短編フィルムを見たことのある人は多いと思う。マイケル・ジャクソンが出演し、特殊なメガネを渡されて、見たあと頭がくらくらっときた、あの3次元映像だ。
 ワンダーワークスは、『キャプテンE.O.』のためにミニチュアセットを制作し、3次元カメラの技術を提供した。
 
 「私が、最初にマイケル・ジャクソンに会ったのは、そのセットで撮影をした時のことです。彼は、私がつくった3Dカメラに魅了され、どうしてもというので、彼のコレクションのために、1台、特注品を用意しました。『ムーンウォーカー』の特撮セットの多くも、ワンダーワークスが制作したものです」
 
 どんな宇宙船のモデルでも制作可能なノウハウ
 
 ブリックは、1977年にムービーミニチュアズという会社を興し、1984年にワンダーワークスという現在の社名に変更している。
 
 「ムービーミニチュアズで最初に手掛けたのは、『スタートレック』用のセット模型をつくることでした。私はまだ30代前半で、それはたいへん愉快なプロジェクトでした。そして、ワンダーワークスに名前を変えてすぐにきたのは、映画『スペースキャンプ』の仕事でした。その時のセット類を、そのままアラバマ州ハンツビルにあるマーシャル宇宙センターに寄贈できたことを、私は今でも誇りに思っています」
 
 ブリックの会社では、イベント関係の仕事も増え、映画以外の目的でも、宇宙船の展示模型をつくって欲しいといった依頼が多数くるようになった。仕事の幅が広がったのである。
 
 「宇宙ものではマーキュリーやジェミニシリーズも得意ですが、アポロのカプセル模型にも自信があります。1994年は、アポロ11号が月面に着陸(1969年)してから25周年にあたるので、アポロの管制センターがあったヒューストンでは、大きなイベントが計画されています。そこで展示されるアポロの模型をつくるプロジェクトも、これから進めるところです。
 最近、NASAから、スペースシャトルの実物大のディスプレイモデルの制作を依頼されました。それは、外観だけでなく、内装もそっくりそのまま再現しようというものです。 
 ワンダーワークス社には、250を超える宇宙船やロケットのデザインストックがあります。わが社では、アメリカと旧ソビエトで製造されて、宇宙に飛翔したすべての型の宇宙船について、実際に搭乗し、操作のできるシミュレーターモデルを、要求に応じて提供することができるのですよ」
 
 宇宙フリークのブリックは人間大好き
 
 「信じてもらえないかもしれませんが、私が最初に大きな影響を受けた日本の映画は、『ゴジラ』でした」
 
 と語るブリックは、ブラッドベリやヴェルヌやアシモフなどのSFの巨匠からは、人間の夢の大きさを学んだという。しかし、彼はまた、モーツァルトを愛し、映画『エレファントマン』に涙を流す人間でもある。
 
 「『スターウォーズ』のようなSFXの超大作も人間的要素がなければ、単なるハードウエアの映画でしかなかったでしょう。私は、人間の可能性を、とことん信じる人間です。人を本当にはっと驚かせるクリエイティブな才能を発揮するのは、教育でもIQでもありません。子どものように感動する心を持ち、すばらしいことなら何にでも大胆にチャレンジする人間こそ新しい可能性を開いてくれるのです」
 
 教育であれエンターティメントであれ医療であれ、そういった無心の天才を生かすプロジェクトに、ブリックは生涯を捧げたいという。
 
 「人間の多様な可能性を極限まで追求したレオナルド・ダ・ヴィンチが、私の理想の姿です。彼は、アーティストで、エンジニアでもあり、建築設計の名手でもありました。また、さまざまな模型をつくったことでも知られています。
 ワンダーワークス社には、社是、社訓といったようなものはありません。しかし、模範を示すか、さもなければそれに従う、ということだけは徹底させています。
 そんなワンダーワークスのノウハウは、すべて試行錯誤の中から生まれてきました。どんなに先端的なテクニックでも、例えば社外講師を招いて貪欲に吸収するようにしてきました」
 
 夢見る力を持ち続ければあらゆることが実現できる
 
 「一例ですが、マイケル・ジャクソンが、どんなに子どもたちの未来のことを考えているかを知ってもらいたいと思うのです。最近、プリンスの最新アルバム『セブン』のためのプロモーションビデオづくりに協力しましたが、彼もそのスタッフも、人間として本当に魅力にあふれていました。プリンスの深く、よく響く生の声にはびっくりさせられました」
 
 日本でも体感ゲームの世界をはじめとして、バーチャルリアリティ(仮想現実)がようやく注目されようとしている。
 
 「人間の活動の中で、バーチャルリアリティによってカバーできないものは、ほとんどないといっていいでしょう。米国では、NASAや国防総省が技術開発のリーダーですが、ワンダーワークスでも、その技術の胸部疾患への応用を検討しています」
 
 この特撮の世界は、どこまで現実の世界に近づいていくのだろうか。ワンダーワークスでは、『スタートレック』『スタートレック2 カーンの逆襲』などの特撮も手がけてきたが、最近の映画では『アビス』の特撮や、『タッカー』のスーパーモデルを制作している。ブリックの夢見る力はパワフルだ。
 
 「現在、ワンダーワークスで進めているプロジェクトに、『グレートアメリカン・スペース&シャトルツアー』というのがあります。それは約30の宇宙船シミュレーターを展示し、多くの人々に宇宙での疑似体験を楽しんでもらおうというものです。今年の5月にエドワーズ空軍基地で開催したエキジビションでは、1日に12,000人の来場者を集めました。日本の皆様にも、ぜひ、体験していただきたいと願っています」
 
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