「燃料電池」という呼び名

                         
 

 

●posted 020804 

同一のものに複数の名前がある場合、時の経過とともに優位となる名前、あまり使用されなくなる名前がある。半導体に関しては、「チップ」「CPU」「MPU」「マイクロプロセッサー」など多くの別名称があるが、インテルが市場を制覇したら「インテルチップ」といった表現が優勢となり、次に半導体そのものを指す名称部分を完全に略した「Intel Inside」といったフレーズが一世を風靡した。「同様のこと」が、FCに関しても起こるような気がする。ただし、その場合、「バラードインサイド」というような形ではなく、むしろ「三洋パワーセル」とか「マイエナジーソース」(ここで、「マイエナジー」は東京電力の子会社名)とか「トヨタプリウスプラチナシリーズ」といった、あくまでも integrator 側に交渉上の優位性の残るようなネーミングになるのではないかと予感している。

FC関連市場で一定の地歩を確立しようとしている複数の企業で耳にしたことがある。それは、「燃料電池は、決してコンピュータのようなことにはならない」という言葉だ。どういう意味なのだろうか? コンピュータ産業では、大手ハードメーカーも、製品付加価値のかなりの部分をインテルやマイクロソフトに奪われてしまった。この事実については、もはや贅言を要しない。が、燃料電池に関しては、心臓部品といえども、部品にとどまる燃料電池のベンダーに付加価値の重心が移るようなことだけは、大手システムメーカーが断固として阻止する可能性がある。そういう含みが「燃料電池は、決してコンピュータのようなことにはならない」という言葉に込められている。自動車、分散電源、マイクロFC即ち携帯用の燃料電池のいずれについても同様の展開となりうる。各社とも、インテグレーションメーカーは決死の覚悟で内製化をはかるのではないかと思う。静かな死闘が始まっているのである。

 

●posted 020725 

fuel cell というのは、小型発電装置であって、電気の溜池である1次電池や2次電池(バッテリー)とは、根本的に異なる存在だ。ものの本にも「燃料電池を充電する」という初歩的な誤記が多く見られてきたが、さすがに最近の文献では、そういうことも少なくなってきている。そういった誤記の原因のひとつは、言うまでもなく、fuel cell を「燃料電池」と翻訳してしまった初期のエラーそのものにある。
 
私は、fuel cell も、具体的な商品が普及段階に入ると、即ち一般的なマーケティングのフェーズに入ると、おそらく日本でも、呼び名が変わるのではないかと予感している。出世魚のようなめでたさで変わるとよい。燃料電池という表記は、イメージも固く、R&D段階向きの名前だ。先行離陸する各々のアプリケーション分野で任意に呼び替えるケースが出てくるのではないか。私も文章では、FC、FCと書いてもいるので、「エフシー」も一案。「マイクロセル」(この場合は限りなく細胞のイメージを連想しながら)や「パワーセル」(この場合はパワフルな細胞発電所のイメージか)も、いいかもしれない。
 

現実に、半導体と同じ基板上に超小型FCを組み込むことを研究しているチームもあるが、光オンリー系とか、温熱系アプリケーション以外の用途では、やがてロジックデジタルとエネルギーデジタルが、同時併行的に回路設計されるようになる可能性も高い。マイクロセルがエレクトロンフローを生み、光源になると同時に、ロジック回路におけるビット演算を可能にしてくれる。