竹本隆の「It's 外資 この人」 初出は月刊「ニューメディア」1998年5月号
                          
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    バックウェブ(株) 代表取締役社長 大谷泰治氏
 
   〜他社と一線を画するプッシュ技術を多数の情報サービス企業が利用〜 

                     竹本隆  メディア・アナリスト
 

リード
 
 97年なかばごろまでは、プッシュ技術がかなり評判になったが、昨今はネガティブな論調も出てきている。いわく、「プッシュは終わった」「一方的な垂れ流しには当然ながら功罪がある」 論点はニーズの視点から確認されるべきものだが、いずれにも一理ある。HDの容量にも限界のあるいま、データを野放図に送ってこられても、消化不良を起こす人間が多いのではないか。TVはかなりのところ垂れ流しのメディアであるが、しかし、だからこそ広告予算の大半は、そこに流れ込む。ネットワークにより選択的にゲットできる電子新聞より、なお紙に印刷した新聞の方が圧倒的に大きな市場を確保しえているのはなぜか。そんな古典的な争点を満載したテーマ、それがプッシュ・テクノロジーである。純粋なプッシュ技術ではないバックウェブ社の製品は、いかなるソリューションを提供してくれるのだろうか? (ヒアリングの実施は、1998年2月16日)
  

本文
 
(以下、文中で、Oは大谷社長、Yは兼松コンピューターシステムの山本勝之取締役、Tは竹本隆)
 
▲バックウェブ・サーバーは単なるプッシュではない
 
 ウェッブそれ自体が、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの有力媒体だといわれて久しい。ワン・トゥ・ワン・マーケティングのツールとして、バックウェブのシステムは、どのように活用できるのだろうか?
 
(T)「ひところ数十社がひしめいているといわれたプッシュ・テクノロジーですが、最近は数社にしぼられてきました。御社、カスタネット・チューナーのマリンバ、そしてポイントキャストの3社ですが、御社の位置づけについて知りたいところです」
(O)「既に当社のメイン商品であるバックウェブ・サーバーは、全世界で200社以上の企業にお使いいただいています。当社は、将来の情報ハンドリングのありかたを視野に、情報=知識(ナリッジ)をどうマネージするかというコンセプトから、システム商品を提供してきました。まずその特徴などについて、御説明をさしあげたいと思います」
 
 
▲高度なすきま通信
 
(Y)「社内ネットなどでも、なかなか掲示板に示した情報を全員に読んでもらうことは難しいものです。業界の最新情報や会社として重要度の高い情報であっても、スタッフに読んでもらえないことにはどうしようもありません。社員からいえば、更新時期のわからない情報については、つい注意が散漫になってしまうということもあるでしょう」
そこで、より到達確率の高い情報送信の1手段として、バックウェブ・サーバーが提案された。
(Y)「バックウェブのシステムでは、送信されるべき情報の単位のことを『インフォパック』と呼んでいます」
インフォパックは、4つの表示方式で表現される。まず「短信(インフォフラッシュ)」と呼ばれる形式だが、これはテロップのような形で流されるもの。次に、スクリーン・セーバーに託される情報。そして、壁紙を通じての表示、音声による伝達がある。
(Y)「また、どのような種類のファイルでも伝送できる点が強みですね。HTML、ジャバ・アプレット、GIFなど、通常ウェッブで送信できるファイルはもちろんのこと、表計算データやCADデータなど、バイナリー・ファイルも自由に送ることが可能です」
 バックウェブを技術を使えば、「クライアント側のプログラムが間欠的に(チャンネル)サーバーにアクセスし、必要なデータをクライアント端末のHDDにダウンロードする」ことが可能になる。
(Y)「どんなユーザーでも1日1回ぐらいはパソコンのスイッチを入れるだろう、という想定が前提になっていますが、ネットワークがつながれば、その瞬間から情報ゲットのプロセスにはいります。断続的に小さな単位で入手できた情報を、あとでひとつにまとめることができるように設計してあるので、回線接続の空き時間の有効活用にもなります。マリンバの場合、送受される情報の最低単位は1バイトですが、バックウェブの場合、1キロバイトなんです」
 
 
▲低コストの広告媒体や電子掲示板として有効
 
 このようなシステムを情報発信側から見れば、情報ユーザーのモニター・ツールとして使える。ネット経由なので、情報収集は速いし、データのまとめも迅速に行なえる。
(Y)「広告メディアとして活用することも可能です。1インフォパックあたりの広告宣伝/マーケティング・コストは0.8円以下ですが、雑誌広告の場合、1ページで、1講読者あたり5〜20円もかかってしまいます。TVのCFの場合、15秒ものでも、1視聴者あたり10円以上はかかります」
 ナローキャストならざるパーソナルキャストの時代である。
 また、通信の効率性をイントラネットでいかせば、未来のグループウェアに道はつながる。
(Y)「主要な使い方としては、電子掲示板情報の強制通知、基幹システムからの(目標未達などの場合における)警告情報、組織として代行収集した外部情報のスタッフへの配信、ソフトウェアのバージョンアップ情報の一斉広域同報などが想定できます。電子コマースや出版情報の配信などにも、活用できるはずです」
 
 
▲バックウェブのクライアント・ベース自体が強力なシグナルだ
 
 バックウェブ社のクライアント・リストを見ると、同社の製品仕様がわからなくとも、その産業界への訴求力の一端を見てとることができる。
(T)「ウォールストリートジャーナルが御社のサーバーを利用しているというのは、実に大きなメッセージですね!」
(O)「そうですね。全文配信を行なっています」
(T)「バックウェブの顧客リストを拝見すると、ワクチン・ソフトのマカフィー・アソシエイツ社の名前も見えますが、これはどういったアプリケーションなんでしょうか?」
(O)「同社は、全世界に1000万を超えるクライアントを有しています。ワクチン・ソフトはひんぱんにアップデート・ファイルを配付する必要がありますが、その配信にバックウェブが使えると判断していただいたようです」
金融情報サービスの世界的な雄ブルームバーグは、エクストラネットの構築に関して、バックウェブのクライアントになっている。東京金融ビッグバンのからみで、にわかに注目度の高まった世界最大の投資信託会社であるフィデリティー・インベストメンツも、バックウェブによるイントラネットを重要な事業のベースにしている。
(O)「バックウェブのクライアント・ソフトは公称2000万ユーザーですが、フランスのファッション雑誌『エル』がバックウェブを使って配信しているチャンネルはたいへんな人気で、ほとんどの人が講読しているといってもさしつかえないのではないでしょうか」
(T)「スリーコムなどでは、どんな使い方をされているんですか?」
(O)「スリーコムは、ユーザーに対するドライバー・ソフトの配付や、代理店への各種情報の配付などに利用しています。代理店への配付ということでは、ルフトハンザやヒューレット・パッカードなども使っています」
 
 
▲イントラネットとエクストラネットに力点
 
(T)「他社との差別化は?」
(O)「マリンバは当社の有力な競合相手ですが、ジャバ・ソフトの配信という目的から設立された会社なので、その製品は技術的に難しく、一般のユーザーには使いにくいものです。また、ポイントキャストは、主として広告収入に期待した放送局型のビジネスなので、あまり競合する相手だとは考えていません。ただ認知度の向上という観点から、当社もある程度はこの方面にも力を入れたいと思っています。
 当社では、イントラネットとエクストラネットに力点を置くことで、違いを明確化します。アメリカのCEO(最高経営責任者)からも、ビジネス向けのシステム・サイドに力を入れるよう指示がきています。
ポイントキャストがマイクロソフトに採用されることによって認知度が高まったということもありますが、当社の製品についても、知名度を高めエンド・ユーザーの数を増やすことが最優先の課題になっています」
 バックウェブ社の事業パートナーには、多くの有力企業名がリストアップされている。たとえば、マイクロソフト、ロータス、スリーコム、ヒューレット・パッカード、チェックポイントなどである。
 
 
▲日本でも「情報高感度企業」が活用
 
 バックウェブ・サーバーは、現在、ウィンドウズNTあるいはソラリス上でのみ、稼動する。現行バージョンは、4.0である。クライアント・ソフトは無料でダウンロードできるようになっているが、日本語版は年内に予定されているリリースを待たねばならない。インターネット・エクスプローラー4.0には、オプションとして搭載されている。
(T)「始まったばかりの日本での展開ですが、抱負をお聞かせください」
(O)「まずは実績を固めることです」
ヒアリング時点で、チャンネルTK(小室哲哉の情報チャンネル)、エルなどが、バックウェブ・チャンネルを既に配信していた。
(O)「98年2月中に、ギャガ、ディレクTV、タワーレコーズ、インフォシーク・ジャパンなども、バックウェブ・チャンネルを配信を開始される予定です」
 さすがに情報高感度企業が、先行ユーザーとして名前を連ねている。
グーやヤフーでも、(競合製品との比較の中で)当然利用を考えるべき技術であろう。大手新聞社が電子新聞事業に将来の可能性を真剣に見ているのであれば、やはりバックウェブ・サーバーについては、慎重な考察を加えるべきではないだろうか。
 
(T)「ところで、大谷社長とバックウェブの出会いは、どのようなものだったのでしょうか?」
(O)「アメリカのソフトハウスの対日参入を促進するために活動している、ジャパン・エントリーという組織があります。実は、ジャパン・エントリーの活動によって、バックウェブはわれわれ関係者に認知された経緯があります」
有力クライアントを広く獲得できるかどうかは、価格設定と端末サイドのソフトの軽さにかかっていると思う。
筆者も、自分の端末(パワーMac8600/250)で試用してみたのだが、バックウェブのクロックが立ち上がる時に別のアプリケーションに着手していたりすると、フリーズを起こすことも多かったので、ユーザーの電子メディア環境への繊細な配慮も、かなりたいせつなことだと思った次第である。
 
 日本での成功を祈りたい。
 
 

FACTS
 
バックウェブ(株)  
 
設立: 1998年1月
本社所在地: 〒160-0023  東京都新宿区西新宿6-12-1
パークウェストビル11F
TEL: 03-5325-3167 
代表取締役社長: 大谷泰治(やすじ)
株主: バックウェブ・テクノロジーズLTD(イスラエル)100%出資の子会社。
特記事項: 日本での販売代理店は、現在、兼松コンピューターシステム(http://www.kcsl.co.jp/)、大和総研、NTTラーニングシステムズ、NTTPCコミュニケーションズの4社。
 
大谷泰治氏の横顔: 1947年、東京生まれ。慶應大学卒業後、新日鐵に入社。ヒューストン駐在などを経て、新日鉄情報通信システムに出向、オラクル関連事業の立ち上げに参画した。同社退社後、サイベースで営業開発部長などを歴任。97年9月、バックウェブに参加。
 
http://www.backweb.co.jp/
 

バックウェブ・テクノロジーズ 
 
本社=発祥の地はイスラエルだが、アメリカ(カリフォルニア州サンノゼ)には米国本社がある。
創業: 1995年10月(開発作業は、95年2月から行なわれていた) 
会長: ニール・バーカット
CEO(最高経営責任者): エリ・バーカット
 
ニール・バーカットの経歴: 1988年、BRMテクノロジーズ社の設立に参画。同社は、アンチ・ウイルス技術やファイアウォール技術の有力企業。ヘブライ大学卒業。
エリ・バーカットの経歴: バックウェブ・テクノロジーズ社の創設者。ニール・バーカットとともにBRMテクノロジーズ社を創設。同社の関連会社に、チェックポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ社がある。ヘブライ大学で、コンピュータ・サイエンスと数学を学んだ。
主要株主: BRMテクノロジーズ、ゴールドマン・サックス、ソフトバンクほか
  
http://www.backweb.com/
 

(付表)バックウェブ社の資料より引用
 
                   バックウェブ(B) 対 マリンバ(M)
 
                         B       M
他のアプリケーション実行中の新着通知      可能     不可能
ダウンロードできるPCファイルの種類      すべて   JAVAで包む要あり
個人別コンテントの生成とダウンロード      可能     不可能
受信者プロフィールと利用履歴の収集       可能     不可能
あとまわし伝送                 可能     不可能
圧縮伝送                   すべて     不可能
同じファイルのダウンロード忌避         可能    限定的に可能
小刻み分割伝送              1バイト単位   1バイト単位
 
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