ヒロシマ 祈りと記憶/040911送信メール

神州不滅・一億玉砕
 

 生命を粗末に扱う政府など、ろくなものではない
 
 「神州不滅」と「一億玉砕」という2つの4文字熟語は、絶対矛盾の8文字であり、この絶対矛盾を受忍させられた時に、ヒロシマ/ナガサキの悲劇は既に懐胎していたといっても過言ではない。
 
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 第2次大戦下にあって、「神州不滅」という4文字熟語は、この言葉につながるあらゆる概念と精妙に融合し、国民の間にユニークな心理的気分をかもし出し、戦意高揚をもたらすことに貢献した。
 
 しかしながら、日本の外に息づく諸国民の文化と尊厳への想像力をあまりにも欠いた人間が、「神州不滅」という言葉を用いてローカルな政権政体をのみ称揚し始めた時、惜しむらくは神なる言葉そのものが汚されてしまったのである。
 
 ミッドウエー後、大局的な形勢は逆転し、マリアナ沖海戦では、彼我の空戦テクノロジーの優劣が青天白日のもと明らかとなった。そしてサイパン/テニヤン陥落、硫黄島敗退をもって、日本の内地を狙った戦略爆撃への道を開いてしまった。レイテ沖海戦から沖縄戦の中で苦し紛れに編み出された「特攻」の手法は、自殺行為そのものであった。特攻と自爆テロは似て非なるモノという根強い意見があるが、境界線は曖昧である。
 
 1,200もの米英の艦船が沖縄沖合に集結して遂行された沖縄戦は、最初から玉砕となることが火を見るよりも明らかであった。大本営の判断能力は、とっくに自壊していた。ゼロ戦による特攻は、special mission attack ではあったが、suicide bomb であり、suicide bomber であったことを、再認識しなければならない。通算で1万機を超えるゼロ戦が製造されたが、パイロットもろとも、往年の名機の大半が消耗品として海の藻屑と消えた事実を痛恨の一事として記憶しなければならない。
 普通のゼロ戦だけでなく、B29への体当たりの特攻を指令された震天制空隊の改造機も人間爆弾「桜花」(ロケットエンジンによる推進で時速960kmのスピードを出すことができた)も、suicide machines であった。震洋は suicide boat であり、蛟竜や海竜は suicide submarines、人間魚雷回天は suicide torpedo であった。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/3853/3w10.htm#name2
 
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 本土空襲(戦略爆撃)で主要都市の破壊が進むのを見て、大本営は、本土決戦、一億玉砕を言い募り始める。東京大空襲(1945年3月10日)までは大本営は東京にしかなかったが、臨戦指揮命令系統を多重化するため、その直後の4月7日には、西の大本営(第二総軍司令部)が広島に設置されることとなった。日清戦争時、広島に大本営が置かれたことがあったが、再びここに軍事司令本部が設営されたのである。
http://yutaka901.web.infoseek.co.jp/index.html
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/visit/est/panel/A2/2209_2.htm
 
 「全軍特攻」「一億玉砕」とは、まことに勇ましい表現だが、これ以上にシュール(非現実的)な概念は存在し得ない。生命線を守ることを大前提とするべき人の子が、正気で口にするべき言葉ではない。
 そして、8月が始まるまでに、国内に残されていた5,500機の飛行機すべてを「全機特攻」のために使い切ることが意思決定されていたという。国民全員に自殺を覚悟させた国体というものが、かつてこの地上にあっただろうか。
 原爆投下は、それからほどなく戦敵の手によって実行に移された。一億国民が玉砕することはなかったが、ヒロシマ/ナガサキの市民が、身をもって玉砕の非人道性を体験することになった。
 
 
<<<  竹本隆